【前回記事を読む】日本列島で最初に生まれた島──淡路島が「国生みの島」と呼ばれる所以は、日本神話。古代の気配が残る場所を歩きながら…

第1章 西国に、「いのち」と「平和」を巡る

1 国生みの島から宇宙へ──淡路島と138億年のつながり

10月20日―21日(大阪→淡路島)

「人は、どこから来たのか」

神話は、太古の人々が世界の成り立ちを理解しようとした「最初の科学」と言えるかもしれない。一方で、現代の科学は、望遠鏡、電子顕微鏡や加速器などを使って、宇宙の起源や生命の謎に迫ろうとしている。二つの視点はまったく違うようでいて、実は同じ問いの前に立っている。

現代の科学が明らかにした宇宙の歴史はこうだ。

宇宙は138億年前、ビッグバンという大爆発によって生まれた。そこから星が生まれ、星の内部で核融合が起こり、酸素や炭素などの元素がつくられた。さらに超新星爆発によってさらに重い元素が生まれ、宇宙に撒き散らされた。やがて太陽系が形成され、46億年前に地球が誕生した。(1、2)

では、私たちの体を形づくる元素(*1)はどこから来たのか。

答えは簡単であり、壮大だ。

私たちの体は、かつて星の中でつくられた「星のかけら」でできている。

淡路島の海風の中でこの事実を思い返すと、神話と宇宙物理学がふと静かに重なって見える瞬間があった。

神話は「日本のはじまり」を語り、科学は「宇宙と生命のはじまり」を語る。どちらも、人が「自分はどこから来たのか」を知りたいという深い思いから生まれた物語だ。

生命科学の視点からいえば、生命は約38億年前に地球上で誕生したと考えられている。最初は微生物のような小さな存在だった生命は、環境に適応しながら多様化し、やがて動物や植物が生まれた。我々、現生人類 ホモ・サピエンスの登場は、たった20万~30万年前にすぎない(1―3)。

こうして並べてみると、私たち人間が生きている「いま」は、宇宙の歴史の中のほんの一瞬だ。淡路島の神話の地に立ちながら、その時間のスケールを思うと、胸がすっと広がるような感覚があった。

中高校生に講義をするとき、私はよくこう言う。

「人生100年は、宇宙138億年から見れば一瞬のきらめきだ。でも、その一瞬に何を感じ、何を大切にするかで、人生の意味は変わる」

淡路島の空の下で、私は改めてその言葉を思い返した。神話が語る「国のはじまり」と、科学が語る「宇宙のはじまり」。その両方を胸に抱えながら、私は次の目的地へとハンドルを切った。