金曜日のランチ
午前中の授業が終わるとすぐにランチタイムです。ランチは一日の中でメインの食事で、メニューはオードブルまたはポタージュ、サラダ、メインのお料理と野菜の付け合わせとフルーツです。
赤いチェックのテーブルクロスとお揃いのナフキンが畳まれて白い封筒に入っていました。
「かりん、封筒に名前を書いて」
と、お隣に座っているイラン人のギターが教えてくれました。
ナフキンは1週間同じものを使うのでした。紙ならば毎回新しく出来るのにとかりんは思いました。すでに当時からスイスでは、ゴミを増やさないようにしていたのです。次々とお料理が地下のキッチンから小さなエレベーターで上がってきます。生徒たちは「ナフキンをください。パンをください。お水ください」とメイドさんたちに言います。
最初は年上の人たちにこんなことを頼んでいいのかなあ、とかりんは思いました。しかしメイドさんたちは自分たちの立場をわきまえているのか、当たり前のように笑顔で仕事をこなしていました。
かりんもこんな習慣に慣れるのに時間はかかりませんでした。
寄宿学校にいる時は、かりんも“お嬢様”になれました。
もちろん日本に帰ってこんなことを言ったらママに「いい加減にしなさい!」と怒られてしまいます。
さて金曜日は宗教上の決まりでお肉を食べることが出来ない生徒たちがいるため、メイン料理はお魚です。白身魚のフライやレマン湖で取れるお魚のフリットです。だから金曜日は生徒たちのテンションが下がるのです。
そのうえ金曜日は、校長のマダム・ダントンが食事中に1週間の成績結果をコメント付きで読み上げます。いつもならば賑やかに話をしながらの食事なのに、この時ばかりはシーンとしています。
食事が始まるとすぐにバターンと重いドアが開きました。マダム・ダントンの登場です。老眼鏡を掛け左手には成績表を持っています。右手はジェスチャーをするために空けてあるのです。
生徒たちは「何でこんな食事中に消化が悪くなるようなことをしなければならないのか」と言いたそうでしたが、話すと怒られるので目で合図をしていました。
しかしこの試練を乗り越えないと楽しい週末はやって来ません。
かりんはマダム・ダントンの言うことを右から左へ聞き流すことにしました。フランス語なんて急に理解出来るようにはならないのだから。