「あの時うちの課の女性職員が、あなたが持参した投影機を机の上にセットしようとしてあまりの重さにびっくりして、『とても持てないわ』と大声をあげたのを私はよく覚えてますよ」

「あの時は皆さんにいろいろ助けていただきました」

「そして大型の湿地帯用の掘削機の映画を見せてくれて、私達はこの機械はメナム平野で活用できると確信したので、それから局員全体に周知させるべく、ほぼ2週間に一度の割合であなたに来ていただき映画会を開催してきました。あれから6カ月、今日ここにあなたをお連れした理由はこれです」

と言って、アピラック氏は、やおら持ってきた鞄から長い縄を取り出した。

「すみませんがこの縄を腰に巻いて、この水田に入っていただけませんか。あなたが実際の体感として、あの20トンもある大型掘削機が、ここで使えるか確認していただきたいのです」「了解です」。

私はパッとシャツとズボンを脱ぎパンツ一枚になると、渡された縄を腰に巻き、その端をアピラック氏に持ってもらい、そろりと茶色に濁った水田に足を踏み入れた。生ぬるい水とぬるっとしたヘドロの感触が進むにしたがって足首から膝に、そこから腰へ、そして胸まできた時に水は首まできていた。

私は手を上げて親指と人差し指で丸を作り「100%OKです」と叫んで綱を引いてもらった。胸まで達したヘドロから抜け出るのにはだいぶ苦労したが泥まみれで上がってきた私にアピラック氏は「どうですか、行けますか」と真剣に問いかけてきた。

私は自信たっぷりに「人間の接地圧を1とすると、我が社の機械のそれは0.79ですから120%大丈夫です。もし沈んだら無償で引き取りますからご安心ください」と言い切って彼の目を見た。

「これで安心しました。あなたを信じましょう」

それから炎天下で待つこと約20分、チェンマイ発バンコク行きの列車が来て、我々はムッとする車内に乗り込んだ。アピラック氏は毎月定期観測に訪れているそうで、列車の運行スケジュールに詳しいのだった。

この帰りの車中で、「タイはまだ低開発国で、さまざまな問題を抱えています。これからのタイ経済をどう進めるか、我々少壮官吏が中心となって、BOI(Board of Investment=投資委員会)を引っ張り、政策を立案しているところです」と言い、そして、私の率直な意見を求めてきた。

 

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