【前回の記事を読む】10年前に恋人が死んで以来、彼は土の中から出てこなくなった――だが彼女と暮らした土地に、よそ者が棲みついたと聞いた彼は……
第1章 森の動物たち
モグラのモクちゃん
さてその日がやって来ました。森の広場には森の動物が集っていました。広場の中央にはモクちゃんがいましたよ。モクちゃんは手に赤い旗を持ち、口に笛をくわえています。
やがてモクちゃんは、ピーと大きく笛を吹きました。皆のざわめきがいっぺんに無くなりました。するとモクちゃんは手に持った旗をサッとあげました。すると、どうでしょう。森のどこに隠れていたのか森の鳥たちが三列縦隊で飛んで来ました。小さい鳥から順番に大きい鳥になりました。最後に飛んで来た大鷲は思いっきりの低空飛行をしました。
鳥たちの飛行が終ると、モクちゃんはピーと笛を吹いて、また旗をサッとあげました。
すると広場の東の端から地響きをたてて、大きな動物がやって来ました。やはり三列縦隊です。先頭を歩いているのは象の群れで、それからカバやサイや牛の群れが続いています。「わあ淒い」見ている皆がびっくりしています。そしてモクちゃんの統率力には皆舌を巻いています。こんなこと誰にでも出来ることではありませんから。
大きい動物たちの後には、昆虫たちの飛行、それから小さい動物たちの行進、と続きました。森の皆は久し振りにこのとき心を一つにしていたのですよ。
さてその日の演習が終ったとき、モクちゃんはこの村に居座っているヨソモノに伝言を伝える使いを出しました。明日の朝までに出て行かなければ、森の皆は決して容赦しないだろうという伝言です。でも身体を壊しているものや、仲間に加わりたいと思うものは申し出るようにという言葉も忘れませんでしたよ。
さて次の日の朝になりました。居座っていたヨソモノの殆どは姿を消していました。この森のまとまりを見せられては、とてもここにはいられないと思ったのです。
やっと森に平和が来ました。モクちゃんありがとう。皆はモクちゃんに、感謝しましたよ。モクちゃんは目をしばたかせて聞いているばかりです。そして夜になって誰もいなくなったとき、モクちゃんはピーコに言いましたよ。
「僕はまた、家に帰るよ。皆の楽しそうな顔をみて嬉しかったよ。でも皆の楽しそうな顔を見るとモクミちゃんのことを思い出しそうになるので、思い出さないうちに帰る。そして多分もう出てくることはないと思うけど、皆には何かあったらいつでも出てくるからと言っといてよ」。
ピーコは、モクちゃんの言葉を聞いてモクちゃんはもう長くないのかなと思いました。
最後にピーコは言いました。「でもモクちゃんって、今でも凄い力を持っているのね。びっくりしたわ」。それを聞くとモクちゃんは声を低くしてそっと言いました。「あの広場の、トンネル掘りのことだろう。あれは自信がなかったので、事前に三日かけて地ならしをしておいたのさ」