長い時間をかけて、多くの人の成長と停滞を見てきました。新入社員の頃から、目の前の仕事に素直に向き合い、失敗から学び、人との関係の中で成長し、やがてマネージャーになり、本部長になり、役員になっていく人がいます。

一方で、最初は高い意欲を持って入社したにもかかわらず、どこかで心の流れが止まり、モチベーションが少しずつ下がり、やがて会社を去っていく人もいます。

営業マンとしては非常に優秀だった人が、マネージャーになった途端に人間関係に悩み、自信を失い、プレーヤーに戻ることがあります。

分析者としては鋭く、専門性も高かった人が、チームを率いる立場になった途端に、周囲との関係をつくれず、苦しむことがあります。

マネージャーまでは順調に成果を出してきた人が、部長になった途端に、部下から尊敬を集められず、孤独になったり、悩みながら降格したり、会社を去っていくこともあります。

役員になりたいと強く願いながら、焦りが先に立ち、周囲との信頼を育てきれず、部長のまま定年を迎える人もいます。私は、そうした人たちを数多く見てきました。

そして、正直に言えば、見てきただけではありません。私自身も、その分かれ道の前で、何度も迷い、間違え、悔いを残してきました。

もっと早く、その人の言葉にならない違和感に気づいていれば。もっと早く、行動の奥にある感情を見ていれば。もっと早く、感情の奥にある解釈に問いを立てていれば。もっと早く、相手を変えようとする前に、自分の見方を問い直していれば。

そう思う場面が、いまでもあります。だからこそ、私はこの本を書こうと思いました。

これは、成功者として何かを教える本ではありません。完成した人間が、未完成の誰かに答えを与える本でもありません。むしろこれは、長い時間をかけて人と組織に向き合いながら、何度も失敗し、何度も遅れて気づき、そのたびに立ち止まってきた一人の人間が、ようやく言葉にしようとしている本です。