「母には幸せでいて欲しいから、邪魔したくないの。会うわけないわ」
「会いたい時もあるだろ?」
「プーさんがいるもの。家を出ていく時、母が縫いぐるみのクマのプーさんをくれたの。今もそれを抱いて寝てるわ」
「やっぱり、君はお嬢さんだ」と言って神矢が笑った。
「ねぇ。絵はいつできるの? いつ見せてくれるの?」
「まだまだだよ。できあがったら、君のヌードを見られなくなる」と言ってまた笑った。
「今日はもういいよ。さぁ、服を着て、こっちへおいで」と言って、神矢は画材を片づけ、ダイニングに行ってしまった。
私は服を着て、彼のあとへ行った。「お飲み」と言って、いつものコスタリカを置いてくれた。
「『ココ』へは行ってるの?」と私は聞いた。
「あぁ。君のいない時にね」
「どうして避けてるの?」
「さぁ、どうしてかな? 君はやっぱり毎日お昼に行ってるらしいね」
「マスターから聞いてるのね」
「いつも、ステンドグラスの窓の下の席に座ってる」
「そうよ。私の心の教会よ」
「何を祈ってるの?」
「ひ・み・つ!」
貴方が幸せであるように……そんな事、言えなかった。
▶GLO限定・特別企画。 21時から3時間だけ開く「夜の書斎」──。
大人の女性のための、激しく濃厚な恋愛作品を毎晩こっそり更新します。
10月9日(金)から公開スタート! 特集ページはこちらから
▶この話の続きを読む
彼の言った一言で、私は悲しくなった。さっきまでお互いニコニコと見つめあいながら食事をしていたのに…
ゴールドライフオンライン(GLO)は、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン(GLO)編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp