第3章 伝説の男

1 幽霊伝説 結城、大食いする

その日の夜、洞口は後輩二人を連れて行きつけの居酒屋で飲んでいた。

「いつになったら刑事になれんのかなあ」

洞口は溜息をつきながら愚痴る。前にも言ったがろくな実績も上げていないにもかかわらず、この男は刑事志望である。焼き鳥を箸でつつきながら後輩の一人、古尾瓜生が愛想笑いを浮かべながら、

「皆、見る目がないんですよ」

そう白々しい怒りモードで言う。この男は顔はそこそこイケているのだが、先輩や上司に媚び諂っていい思いをすることばかり考えている。もう七年以上あちこち行かされている洞口のことを、

『そりゃ、あんたができない奴だからだよ』

なんて思っているのはおくびにも出さない。古尾の横でそうそう、ともう一人の後輩、立場衛が大きく頷く。この男も古尾と似たり寄ったりで、自分の得な方につく日和見菌のような男である。

そういえば、と洞口は忌々しそうに枝豆を口に放り込みながら話し出した。

「うちのハコに幽霊が来たの知ってるだろ? なんかあいついろいろムカつくんだよなぁ。いじめてやろうとすると妙なこと言ってつつき返してくるしよ」

と愚痴りまくる。それを聞いて古尾も立場も怪談でも聞いたように顔色を変える。

「あいつをいじめるなんてヤバすぎますよ! 俺ら、あいつの同期、それも同室だったんです」

洞口は渋面を作りまた幽霊の呪いの話か馬鹿馬鹿しいと鼻で笑い、

「いつも交番の入り口でぼーっと立ってるか、パトロールに行っちゃなんか書いてる、と思ったらじーっと管轄内の地図を見てやがる陰キャ野郎だぜ」

と、結城をぼろくそに貶す。それはそれで立派に業務をこなしているのだが、チャラ男の洞口から見れば真面目ぶっているように見えるらしい。

次回更新は10月4日(日)、7時の予定です。

 

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