A 愛する人の子供が、お腹の中にいる幸せ。けどムカムカする、そんな顔や。
B どんな顔や、分かりにくいなあ。
A そんなツワリのシーンのあるドラマを見てる時、孫が一緒にいたら困るで。
B なんで困るねん。
A どうしたのこの人、何か悪い物を食べたん? ねえ、おばあちゃんって絶対聞いてくるに決ってる。
B そら聞いてくるやろな。分からんことを年配者に聞くのが礼儀やからな。ほんでどう答えたん。
A なにか悪い物でも食べたんかいなっていうより、しょうがないわな。
B それを聞いても孫は、納得しよらんかってんな。
A この暑いのに、臭いも嗅がんと食べたんやなって言うたがな。
B 親がいつもやってんの見てるんや。おかしかったら旦那に先に食べさすのも、見てるんや。
A 何で知ってるねん。
B えげつない親子やな。
A 孫と冬季オリンピックをテレビで見てたら、選手の中に、一人眉を剃り込んだ若者を見つけてん。
B へえー誰の事やろ。
A 有望選手というやんか。
B 眉毛を剃り込んでも、勝てばええんとちゃうか。
A テレビに向かって、あの眉毛はなんや!と叫んだわ。
B 又いつもの癖が始まったんやな。
A 男の眉毛は、濃く太く、凛々しくなくてはアカン。
B まあ好き好きやけど、太い濃い眉毛は、今時の若い女の子には、モテへんで。
A 眉毛ごときに、気を使っているようではなにもでけへんやろ。
B まあ、そんなに怒らんと。
A そんなことで勝負に勝てるわけがない。
B 毎回テレビに向かって怒ってるんやな。はた迷惑な、ほんでその選手は勝ったんかいな。
A なんと剃り込み眉の若者が、金メダル取ったんやがな。若者は一躍英雄や。分からんもんやね。
B 偉そうに言うた手前、バツ悪いやろ。
A そうやねん。「眉毛のお兄さん、勝ったやん。金メダルやん。おばあちゃん」って、孫が言いよるねん。
B そら眉毛だけで、判断した、あんたの負けや。
A もうええわ。