細い綱の上を大きくて太いタイヤがボクをものすごい勢いで追いかけてくる。

細い綱の上を太いタイヤが猛スピードで走る矛盾を考えている暇もなく、ボクは遠くに小さく見える光が近くて大きくなるまで走る。懸命に走る。時々綱から落ちそうになりながら走り続ける。

実際には競歩より遅いスピードに違いない速さで走る。

遠くの光が近くなったころ、ボクはとうとう、大きな“ゴー、ゴー、ゴー”と、うるさくて大きなタイヤに踏み潰される寸前を迎える。迎えたところで光に飛び込む。

飛び込んだあと、ボクは酸素マスクをつけてボクの体がすっぽりと入ってしまう大きな試験管の中に出る。助かったという少しばかりの安心と、どこだかわからない恐怖と好奇心がごちゃごちゃの水の中から試験管の外を伺う。

何人もの白衣を着た研究者らしき人物たちや、なんだか趣味の悪い電飾ばかりが付いた機械装置の並ぶ研究室みたいな場所をボクはずっと大きな試験管の中から酸素マスクをつけたまま眺めている。

やがて研究者らしき人々が繰り返す一定の頷きを経てボクの試験管の水は抜かれ、おぼろげな記憶とともに試験管の中から見えていた研究室らしき室内の風景がだんだんと鮮明になってくる。

大きなスクリーンに、まるで野球のスコアボードみたいに映し出されていた数字と英字、そう、あの真っ赤でカチカチ点滅する数字と英字。

“SA一〇九六七二八五S”