ところがある日突然、建具屋さんがやってきて、ドアを取り換え、二階の和室にカギが取り付けられたのだ。

僕の仕業(しわざ)で傷だらけになった部屋のドアや襖も、すべて直すことになったらしい。僕がジャンプして取っ手を緩めて開けられたドアも、少し高いところに取っ手を付け替えられたので届かなくなった。

勝手が変わって、自由に部屋の出入りができなくなってしまった。この家にだんだん居づらくなり、ストレスが増えてきた。

僕の心は何となく落ち着かず、部屋のあちこちに濃い色のおしっこをした。

不安を感じたときに縄張りをアピールするマーキングの一種のスプレー行為だ。

去勢していない雄猫に多いらしいんだけど、おかしいな、僕はとっくの昔に去勢しているのに……。

智子ママは僕がストレスを感じていることを心配しながらも、「臭い、臭い」と言って後始末の掃除をしていた。

(やっぱり外の世界が恋しい。しばらく旅に出よう)と僕は決心した。