【前回の記事を読む】吐き気と腹部の不快感…「昨日の酒のせい」じゃなかった。昼過ぎにトイレで嘔吐し、塊混じりの吐血。この日が“闘病初日”になった。

第一章 がん専門医師、がん患者になる

その1 大量吐血した日

2023年4月13日(木)「吐血翌日」

消化器ドクターJは毎日朝夕訪室してくれている。昨日は余裕がなかったが、普通に考えれば自分はたぶん胃がんなのだろうと思う。歯科医である自分の兄にもメールで病状を伝えた。

自分はこれまでの人生においては大酒飲みで生きてきたため、吐血をした時には肝臓がん+食道静脈瘤破裂(先輩のドクターはこれで亡くなっている)を想像したが、どうやらそれは免れたと想像していた。

そして、自分の専門領域である頭頸部がんにならなかったことで安心していた。自分の診ていたがんに自分がなってしまうというのは、どうにも因果なもので屈辱的であると思っていたからだ。

「脳外科の教授が脳卒中で倒れた」とか「循環器科の部長が心筋梗塞で救急搬送された」とかいう話は専門医あるあるだ。がんの原発部位(どこに出来たがんか?)やステージング(進行度)なども今のところわかっていないのに、何となく自分は胃がんである、とほっとしている自分がいる。胃がんだって死ぬ病気であるのに……。しかし、今のところ自分に死兆星は見えていない。