「本官には警察官になるという夢がありましたので、東大には行かず警察学校に入ったのであります」
淡々と話す結城に夢子は勿体ねえと呟く。皆、同じことを言う。そう結城は思いながら、夢子のばりばりの化粧や派手なネイルをちらっと見て尋ねる。
「何か夢はありませんか? メイクアップアーティストとか、ネイリストとか、美容系に興味がおありでは?」
そう言われて夢子は我が意を得たりと結城の腕を摑み、
「あたい、ネイリストになりたいんだ。専門学校に行ってちゃんと資格取って将来、自分の店を持ちたいと思ってるんだ。だけど……」
夢子は口を尖らせて憎々しげに言う。
「親は、そんなくだらないこと言ってないで大学に行ってちゃんと就職しろ、の一点張りなんだ。あたいの夢をくだらないと言ったんだ、あいつら……」
その時のことを思い出して夢子は唇を噛んだ。それは酷い、と結城は呟き、重ねて尋ねる。
「それでもうその夢を諦めたのでありますか?」
「そんな、ことは、ない、けど……」
夢子は俯いて膨れっ面をする。
「もし本当にその夢を叶えたいのなら、まずその専門学校に合格できるレベルの学力を身につけ、それと並行して両親に君がいかに本気かということを折に触れて話すのであります」
学力という言葉に夢子は渋い顔をして自虐的に言う。
「あたい、成績はびりに近いし内申書もずたぼろだよ」
「まだ遅すぎることはないのであります。個人指導してくれる塾を紹介しますから、少しずつ頑張ってみては?」
そう励ます結城に夢子は苦笑し、ちりちりの赤い髪をかき上げる。
「こんなあたいが真人間になれると思うか?」
「なれるかではなく、なるのであります」
そう力強く言って結城はふらりと立ち上がる。
「もう日が暮れるのであります。家へ帰って塾の事を親御さんに相談してみては?」
ゆらゆらしながら立っている結城を夢子はじーっと見ていたが、
「やっぱおまえ、キモいわ!」
そう言って笑いながら夢子は神社の階段を駆け下りていった。その後ろ姿を見送り結城は呟く。
「おや、てめえからおまえに昇格したのであります」
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