夫はイタリアのビアンキというブランドのロードバイクに乗っていた。おしゃれに乗りたい私は、それを借りては流れ橋へ行き、ウェアもビアンキにして夏も冬も意気揚々と走っていた。
しかし、身長が170cmほどの夫のバイクに身長154cmの私が乗るとサイズが合わず、肩こりなどの不調が出た。帰宅すると疲れがどっと出て、体のあちこちに疲労感が残っていた。
そこで、バイクの師匠である岩橋さんのご主人が、完全オーダーで私用のロードバイクを作ってくれることになった。師匠は自転車のメカニックだけでなく、組み立てや販売も手がける方だった。自分の体にピッタリ合った自分だけのバイク。夫とのツーリングも考えて、色はビアンキカラーでとお願いした。
バイクには、SPDという初心者にぴったりのクリートシューズ※1対応のペダルを付けてもらった。歩きやすいクリートシューズになるので、そちらのペダルをしばらく使用して、まだビンディングオンリーのSPD-SL※2のペダルは避けていた。
しかもそのペダルは、クルッとひっくり返すと普通の運動靴でも踏める両面ペダルだった。流れ橋往復は距離もそう遠くなく、何とか片道だけならトライアスロンチームとご一緒できた。
しみじみと“皆、速いなあ”と感心ばかりしていたものだったのだが、そのうちに日曜日の「LSD※3初心者と女性のためのロング練習会」にも誘っていただくようになった。
しかし、どんなに遅くても時速25km以上で走るような人たちの中で、周囲より明らかに遅く、時速20~23kmほどしか出せない私は、木津川沿いのサイクリングロードや往復100kmを超える和束へのロングコースには恐れをなしていた。「今日は、和束まで行こうか?」と師匠が言えば、「和束はちょっと……」と二の足を踏んでいた。
思い切って参加した時、私は一生懸命こいでいたのだが、実際にはのろのろとした走りで、一行の全員が信号やどこかで待っていてくださった。特に寒い冬にお待たせする時には本当に申し訳なく、恥ずかしく、「どうか放って行ってください、道はわかりますから」と懇願して先に帰ってもらったこともあった。
※1 ペダルに固定するための「クリート」と呼ばれる留め具を靴底に取り付けた、サイクリング用の専用シューズ。
※2 自転車のペダルの種類で、走る時にクリートで靴とペダルを固定する方式。
※3 Long Slow Distance の略称で、強度を上げずに長距離を一定ペースで走るトレーニングのこと。
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