というのも、一ノ瀬はこの住宅型訪問介護事業所、そして、その事業母体にあたる事業所本社の正社員であり、その一方で、川名香澄はいわゆる非正規のパートタイマーという雇用形態だったこともある。

すると当然のことながら、一ノ瀬はいわゆる早番、日勤、遅番、そして半夜勤も含めた夜勤、それぞれにおいてフルタイムでの勤務となったが、川名香澄はなんでもご家庭の事情とかで、毎週数日の、しかも午後の時間帯の数時間のみの就業であった。

それでもそれ以前の数か月の休職期間を挟む前は、家庭の事情とは別に毎月施設側の事情に応えるかたちでのシフト編成に応じ、主に日勤を中心に勤務時間もフルタイムでの就業だったが、その後一時期、心身の不調を理由に一旦職場を離脱していた。

ただ川名香澄がやむなく休職期間に入る前(その時の川名香澄との遣り取りは、今でもふと振り返れば、一ノ瀬の記憶の中に鮮明に残っている思い出ではあるが)、ある日の午前中の勤務中、たまたま一階の食堂と併設している職員常駐スペースで、一ノ瀬と居合わせた川名香澄は、その時もやはり彼女のほうから何気なく一ノ瀬に対してお互いの趣味の話題で口火を切ってきた。

そこで一ノ瀬が自分の幾つかの趣味に触れた返答を返すと、川名香澄は一ノ瀬の一つ一つの返答に目を丸くしながら強い関心を示してきた。

そして今度は彼女も自分の趣味を幾つか紹介すると、最後に一ノ瀬の趣味の一つに触れて、「実は私も本を読むことが一番好きなんですよ」と、目の前の一ノ瀬に対して、まさに「我が意を得たり」とでもいったような共感の眼差しを向けてきた。

 

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