今さら悪人だったと告白するほど清廉潔白な人間ではないし今積み上げてきた地位が崩れるような勇気もない。本当のことを全部話して炎上と共に芸能界から引退する自分を想像した。吐き気がした。吐き気がするほど嫌だった。なぜ嫌なのかと言えばこの賞賛がなくなれば生きる意味を見失うからだ。

虚の賞賛こそが今の自分を生きさせている唯一の材料だ。矛盾している。矛盾しているとわかっていても変えられない。これが人間というものなんだろ。このバグが改善するためのアップデートを即急に要求する。

あれだけ啖呵を切っておいて、私はまだここにいる。死にはしない。

今さら善人面して善いことをしてももう溜まりに溜まった借金は返せないのはとっくのとうにわかっている。どれだけ徳を積んでも、このマイナスを帳消しにできないのだ。善行を積む理由などない。そこには清々しささえある。

でも、本当に清々しいのか?

清々しいと思わないとやってられないだけじゃないのか?

うるさい。こっちに来るな。感傷。感傷は余分だ。余分な感傷は削除する。バックスペース。バックスペース。バックスペース。

だが削除できない。感情を放るゴミ箱がない。このシステムの設計者に文句を言いたい。請求書を送りつけたい。精神的な損害賠償として過去二十数年分の苦しみを全部金銭に換算して請求してやりたい。受け取るかな。受け取らないだろうな。助けてくれ。

私の人生を漢字1文字で表すならば「虐」だろう。

他者から受けた虐。他者に与えた虐。そして自分自身に刻み続けた虐でもある。3つ全部同じ1文字に収まる。コンパクトだ。美しいくらいコンパクトだ。人生が1文字に要約できるのはどういう気分だろうかと誰かに聞きたいが誰もいない。そもそも誰かに聞いてもしょうがない。知っているのは私だけだ。私が私を知っている。それだけだ。

地平論の集会に通い続けた本山優子。給食センターに怒鳴り込んだ本山優子。「学校に行かないとどうなるかわかってる?」と毎朝カーテンを引き開けた本山優子。リモコンを投げた本山優子。「私だって普通にしたかった」と弱音をこぼした本山優子。

あの人が私に虐を与えた。私があの人から受け取った虐を標的にした人間に与えた。あの人が私に使ったものと同じ技術を磨いて使った。支配と操作と外面の良さと内側の醜さを全部引き継いだ。

本山優子の娘のまま死ぬつもりはない、と言い続けてきたが、もう死ぬ前に本山優子になっていた。

 

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