堕天使の朝
「詩(うた)、ちょっとお母さん手が離せないから、さくら起こしてきてくれる?」半分眠っている状態で着替えていた詩は、
「分かった~着替えたら起こしてくるよ」
「ありがと~」
靴下を履き終わった詩は奥の部屋に向かい、
「さくら~もう朝だよ。起きろ~」と声をかけました。
布団から少し顔を出したさくらは、ちらっと兄の姿を見た後に、またごそごそと布団の中にもぐってしまいました。
「さくら起きてよ~お兄ちゃんがお母さんに怒られちゃうよ」
「もう少しだけ、あと5分したら起きるからもう少しだけ寝かせて~」
「だめだよ~さくらも今日から二年生でしょ? ちゃんと朝起きられなかったら今度入ってくる一年生に笑われちゃうよ!」
「うるさいな~眠いんだからしょうがないでしょ」
「じゃあ知らないよ、お兄ちゃんさくらの目玉焼き食べちゃうからね」「だめーさくらの食べちゃだめー目玉焼き食べないと元気が出ないんだから!」さくらは布団から飛び起き、急いで食卓に向かいました。
起きるのは苦手だけど食べることは大好きな、詩より二つ年下の妹さくら。父の椿(つばき)は航空会社に勤めていて、いつも朝早くに出て帰りは詩とさくらが眠った頃に帰ってきます。
母の明日香(あすか)は専業主婦で毎日家の中を走り回っています。
そしてこの少年の名前は伊達詩、だてうた。つぶらな瞳をした可愛い少年です。
両親は京都出身で詩もさくらも京都で生まれました。そして三年前、詩が小学一年生のときに父の転勤でここ埼玉県朝霞市に引っ越してきました。
8時5分。
「さくらーもう行くよー!」
「ちょっと待ってよ! まだ5分でしょ! 10分までに行けば良いんだから!」
「違うよ! それは通学班の出発時間で、待ち合わせ時間は5分なんだからね。遅れると伊藤(いとう)班長に怒られるよ」
「分かったよー今行くー!」
詩の朝はさくらを起こし、登校させることが日課であり始まりでもありました。