【前回の記事を読む】猫カフェ経営で一発逆転を狙う夫婦…6匹の猫は、客寄せのために無理やり服を着せられ、食事まで見世物にされて……

金もうけ主義に走ってたのかも?

さらにローカル局のテレビでしょうかいされると、お店は猫の手も借りたいほどのにぎわいをみせた。ぼくたちの着るメイド服の数も増え、毎日とっかえひっかえで、お客さんたちを喜ばせた。

でも、いそがしくなったことで、ぼくもゲンキも5匹の猫たちも疲労がピーク。おとんも、おかんも、いそがしさから、ぼくたちへ話しかける言葉が少なくなっていった。そんなある日、ロシアンブルーもどきのハルの食欲がなくなり、つややかな毛も、だいぶぬけ落ちた。

あわてて、おかんが獣医さんのところへ連れていくと、「極度のストレスからくる食欲不振ですな」と言われたそうだ。そういえば、ぼくも近ごろは、なぜか怒りっぽくなったし、毛もパサパサしてきた。いつもだれかに見られていて、行動の自由がなくなった気がする。

それでも店はにぎわっていて、新聞記者や雑誌社の人が訪ねてきては写真を撮りまくった。いろんなお客さんたちから、ぼくたちを里子として引き取る話がくると、おとんも、おかんも、だいじな家族だからと断った。また、かわいそうな猫を引き取ってほしいという依頼がくると、今は手いっぱいだからと断った。

しばらくすると、こんどはゲンキの食欲が落ちた。食べたあとでもどすこともしばしば。体重もガクンと減っている。悪いことに、体のところどころが円形脱毛になった。

「ゲンキは、無芸大食(とにかく食べること)がトレードマークなのに」

ぼくも気にはなっていた。ぼくにもよそよそしい態度をとって近づかなくなった。おかんが獣医さんのところへ連れていくと、診断の結果はストレス性の胃潰瘍だった。

それから半年くらいがすぎたころだ。あいかわらず店は大いそがしだけれど、おとんとおかんの顔がすぐれない。目もくぼんでいる。つかれはてて元気がなくなってしまったのだ。

「あなた、このまま続けていて本当にいいのかしら」

「何が?」

「お店は繁盛して売上はすごいの。でも何かが変」

お客が帰ったあとのしずまりかえった空間の中で、おとんも、おかんも考えこんでしまった。