【前回の記事を読む】久しぶりの我が家で、昼食を作る母の背中を見ていると、父は当たり前のように僕を丸刈りにした…骨のない右側頭部だけは慎重に……
セカンド・バースデイ
病院で過ごす夏休み
夜八時過ぎには、病院へ戻ることとなった。
車窓に流れる景色を、ゆっくりと眺める。その美しさを忘れないように。暮れていく夏の空が、僕の心を映し出したように、少し儚かった。
再び、病院での生活が始まった。二回目の外泊と、その後の再手術を見据え、リハビリに励む。
この日、期末テストの結果と夏休みの宿題を持って、担任の先生が面会に来てくださる。少し遅めのスタートではあったけれど、退院後の学校生活を考えると、復習をしておかないと付いていけない。
言語のリハビリの時間も使って、少しずつ授業内容や解き方を思い出していく。特に苦手意識の強かった数学の文章題は、どうしても手が止まってしまった。課題がたくさん生まれていく中でも、どこかそんな日々に心地良さを感じていた。
それは、「退院して、元気にまた学校へ行く」という目標があったからだと思う。
解けないと思っていた問題が解けると嬉しかったり、軸足の弱さを懸念されながらボールを蹴るリハビリを頑張ったり。
その一つ一つが、明日へと繋がる感覚。緊急搬送され、後遺症が残るかも知れないと言われた、あの日。
奇跡なんかじゃなく、救ってもらった命と、周りからの多くの支えがあって歩いてきた。
じゃあ、どんなに遅れたスタートでも、かっこ悪くても、出来損ないでも、僕が今度は「与えてくれた時間」が無駄じゃないって証明するしかないじゃないか。
課題の中に、理科に関するテーマで四コマ漫画を描くものがあった。久しぶりに火が点いて、長時間机に向かって好きな漫画を描いた。
こうしたら面白いぞ、このテーマでどんなことを描いてやろう。そうやって四つの四角い宇宙の中で、ぷかぷか泳ぎ回る僕は、その瞬間、誰よりも自由だった。やっぱり、漫画が好きだ。
退院したら、もっとたくさんの漫画を描こう。リハビリの時間に中庭を散歩しながら、そう思った。