しかし、これについて彼女は、あらかじめ回答を用意しているようだった。林野庁が宣伝するスギの木が二酸化炭素を多く吸収しているというのはけっこう有名な話だったようで、彼女もそこを突かれると予想していたようだ。
「もし森林にCO2の吸収を求めるのでしたら、スギではなく、モリンガを植えたらいいんです。これは北インド原産の木ですが、日本の冬も超すことができるようです。この木は奇跡の木とも呼ばれていて、種から花まですべての部分を利用できます。さらに驚くべきは、そのCO2の吸収量で、この木1本でスギの14本分ものCO2を吸収するそうです」
「そりゃ、すごい」
「ですが、私はやはり日本ではこの国原産の広葉樹を植えた方がいいと思います。
CO2の吸収量で言えばモリンガには及びませんが、それでも森林総合研究所が行った『冷温帯落葉広葉樹林』のCO2吸収の変動観測では、落葉広葉樹林は観測地に近接するカラマツの二酸化炭素吸収量(約7・8t)の約2倍の二酸化炭素を吸収したそうです。
もちろんカラマツとスギでは同じ針葉樹であっても二酸化炭素吸収量は違いますが、長野県の林業総合センターの調査ではカラマツはスギと大差ない二酸化炭素吸収量を記録しています。
スギが8・3tに対してカラマツが7・8tですから、場所と植林環境にもよりますが、杉だけが二酸化炭素を吸収するわけではないんです」
これには多比余も「おお!」と感嘆の声を上げた。まさかここまで彼女が理論武装しているとは思わなかったのだ。小賀津は続ける。