【前回の記事を読む】「やっとこれから、あいつの人生が始まるところだったのに…」母に捨てられ、父にも見放された教え子は、恩師を裏切ったまま…

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東京に戻った。三日ほど大学を離れていただけなのに、なんだか異世界に迷い込んだ気分だった。午後からの授業にはまだ少し時間がある。気持ちのいい陽ざしを浴びながら、学舎前の芝生に寝転がっていると、同じ寮に住む静男と女友だちの未希がやってきた。同期だから、なんでも話せる気の置けない仲間だ。

「どうだった? 友だちとも会えたの?」

「元気そうだな」

二人の明るい声が響く。

「圭からの問題提起、わたしなりにあたってみたの。色々本を読んでね。おかしいのよね。日本だけなの。日本だけが、若者の使い捨てのような雇用に、なんの手立ても打ててないのよ。特にその時代、一番被害を受けた人たち、特に就職氷河期世代になるのかしら。その人たちは悲惨よね」

未希が鋭い説法を突き付けてくる。未希たちには先輩のことも今の若者の実態も話をしていた。

静男も口を尖らせて、

「EUにも非正規というのはある。だが日本ほど問題になっていない。それは人権意識がすごく高いからなんだ。同じ仕事をしているなら、生活保障をきちんとすべきだと定義しているからね。非正規にも、生活できるだけの保障を、保護していかなければならないとしている。全然違うんだなあ、日本と。悔しいぐらい違うんだ。どうしてここまで差があるんだろうか……」

「本当、情けないよね。みんな声出さないしね。これって、日本の国民にも、大々的にみんながわかるように報道されているかしら。圭の話を聞いて初めて知ったんだもの。わたし労働問題、今とても関心があるの。知らないことだらけなんだもん」