いずれにせよ、世界の覇権国であるアメリカの基本政策の大転換は、世界に絶大な影響を及ぼすことは避けられず、トランプ政権以後の世界は、もはや第二次世界大戦終結以降の世界の根本理念、根本秩序を根底から変化させることにならざるを得ません。そしてこの流れは、もはや不可逆で、トランプ政権後も恐らく続くものと思われます。
そしてこれほどの大変化はアメリカ社会に革命に匹敵する大変化が起きた結果と考えざるを得ません。
ドラッカー(1)は、『経済人の終わり』(2)(以下、これについて本文中で引用する該当ページを示すときは、「経済人」と表記する)の「まえがき」(FOREWORD)の中で、「革命は、社会組織それ自体の基盤に根本的な変化が生じているときにのみ起きる」と言い、「そうした革命は、人間の本性、人間社会の本質、そしてそのような人間社会における個々人の役割や位置づけについての考え方についての革命的な変化に起因していることは間違いない。」(経済人、xxxvi頁)と言っています。
つまり革命は社会の根本的変化の結果起きると言います。ドラッカーは革命が起きるような歴史の断絶の時代、すなわち「旧秩序が崩壊し新たな秩序が出現するまでの移行期間は、混乱とパニック、魔女狩りと〈全体主義〉の期間であった」(同、二三九頁)と言います。
現代が歴史の断絶の期間であるとすれば、現代は全体主義の期間なのかもしれません。近時のアメリカの大変化は、アメリカ社会に革命的変化が起きていることを示しており、それは一九三〇年代のイタリアやドイツのファシズムとよく似た現象を生じています。
ドラッカーによればファシズムは全体主義革命であり、アメリカでファシズム革命が起きつつあるのではないか。そう思ったことが私が本書を執筆しようと思ったきっかけです。
ドラッカーは、ファシズムは複雑な様相を呈するため一九三〇年代当時の人々はこれを正しく認識できず、その結果間違った対応をしてファシズムの興隆を許してしまったとして次のように言います。これは今日でも当てはまるように思われます。
「われわれ民主主義者の、ファシストの脅威に抵抗するあらゆる試みが効果を上げられなかった理由は、われわれが何と闘っているかが分かっていなかったからだ。われわれは、ファシズムの症状については知っているが、その原因と意味については理解していないのである。つまり、ファシストと闘っていると主張している人たちは、自らが創り出した幻影と闘っているにすぎないのである。」(経済人、四-五頁)