はじめに

二〇二五年一月に発足したアメリカの第二次トランプ政権は、関税を武器として、世界の自由貿易体制を変え、アメリカに製造業を復活させようとしています。

これは、一九三〇年代に、主要国が自国の産業を守るべく高関税を掛けあい、世界貿易が縮小し、“持たざる国”であった日本やドイツ等を窮地に追いやり、それが第二次世界大戦の大きな原因の一つとなったことを思い起こさせます。

すなわち、一九二九年のニューヨーク株式市場の大暴落をきっかけに、アメリカは自国の産業を守るべく、スムート・ホーリー法を成立させ、それまで四〇%弱だった課税品平均関税率を六〇%近くにアップしました。それに対し、各国も対抗して関税率を引き上げました。

このことは、植民地を持たず、資源の供給地や製品の販売先を持たない、つまり貿易立国であったドイツや日本等の、いわゆる“持たざる国”を経済的に追い詰めることになり、それが第二次世界大戦の大きな原因の一つとなったと言われています。

第二次世界大戦後、そうした反省に立ったアメリカは自由貿易を推進してきました。その基本姿勢は、オバマ政権までは継続していたと言えるでしょう。その姿勢を一八〇度転換させたのがトランプ政権です。

しかし二〇一七年発足の第一次トランプ政権の時は、その関税政策は、あくまで対中政策の一環に過ぎないかのように見えていましたが、二〇二五年一月に発足した第二次トランプ政権では、それは対中政策にとどまらず、第二次世界大戦終結以来のアメリカの世界政策の大転換であることが明らかとなりました。

トランプ政権のこうした政策転換は、トランプ政権の特異性によるものというより、アメリカ社会自体に根本的な変化が生じた結果であると思われます。つまり、トランプ政権がアメリカを変えたというより、アメリカが変わった結果トランプ政権が生まれたと考えるべきかと思われます。