「今日はありがとうございました。またここで唄(うた)わせてもらえるなんて、夢のようで。本当に楽しかった」

「礼を言うのはこっちの方。寂(さび)れた場末のライブバーなのに、満席にしてもらっちゃって。ほんとに、ありがと」

「寂(さび)れたって。名店じゃないですか。ファンだって多い」

「古いだけよ。駅から離れてるから、いつもは地元の常連さん達がほとんど。今日は違ったけれど」

ご謙遜を、そう笑い混じりに返したメッサーが口角を吊り上げる。

年季が入っているのも主要駅からのアクセスに難ありなのも事実だが、集客に不利と思われる立地でこうも長く続いているのは、客からの評判がさらなる客を呼んでいるからに他ならない。

ユーコオーナーのライブバー、その店名は、音楽仲間の間にも轟いている。

オーナーのお眼鏡に適(かな)った音楽家を、年齢も国籍も問わず数多く招き、名演と称されたステージの数々を繰り広げてきた、紛れもない名店。

音楽家であれば誰しも一度は憧れる、そんな舞台は少なくないが、決して大きくはないこの店も、そのうちの一つとして連なっているのは間違いないだろう。

 

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