はじめに

週刊誌やネット上には、長寿者の生活習慣を調べることで長寿の秘訣(原因)がわかった、食品と健康の関係を調査して何を食べるべきかわかった、認知症の人の共通点を調べることで認知症にならない方法がわかったなど、因果関係に関わるさまざまな情報があふれている。

そのほとんどは、観察研究(疫学研究)による相関関係から因果関係がわかったという論法である。

自然科学はさておき社会科学ではこの論法が主になっている。

女性の家事労働時間が多い国は出生率が低いという相関関係から、「女性の家事労働時間を少なくすれば出生率が上がる」という因果関係を唱える、毎日朝食を食べる子は成績が良いから毎日朝食を食べることを勧めるなどである。

世の中には、共通点=原因と考える思考パターンが染みついている。

金持ちになった人の共通点を実行すれば金持ちになれる、成績が良い子の家庭の共通点をまねれば成績が良くなるなどの単純な論法である。

観察研究の結果は相関関係の証明であって因果関係の証明ではない。あくまでも仮説である。

研究者はメディアの取材に対して仮説(推論)と断ればよいところを証明したように話し、メディアもそのように報道するからおかしなことになる。

社会に誤ったメッセージを伝える危険性があり、結果的に相関と因果の違いに疎い読者の情報リテラシーを損なうことになろう。これは健康を損なうのと変わらない。

因果関係を調べるには観察研究と介入(実験)研究の二つの方法がある。

観察研究は対象を外から眺めてその関係を推測する。

これに対して介入研究は仮説を立て、その仮説に基づき対象に働きかけ仮説通りの関係か確認する。

対象の周りをぐるぐる回るのが観察研究で、対象の中に入り込むのが介入研究といわれる。

観察研究は酒を飲んでいる人を観察するが、介入研究は酒を飲ませて(強制して)観察する。

観察研究では現象Aと現象Cが関連しているという相関関係はわかっても、現象Aによって現象Cが起きるという因果関係はわからない。