もうかれこれ二十年も前に、モクちゃんがこの地にやって来たときは、ここはとても荒れていて、今にも枯れそうな古い木々があるばかりの所だったそうです。
その森を今のような緑の森に変えたのはモクちゃんだったのです。モクちゃんは毎日毎日森の中にトンネルを造りました。
モクちゃんは一日に何百メートルも進むことが出来るほどの、トンネル掘りの名人なのです。
モクちゃんが毎日毎日何年も掘り続けたので、土もすっかり柔らかくなり、土の中に空気も入って、植物の種が大きくなり易くなって、森に沢山の緑が生れたのです。
そしてモクちゃんはその森の中で、モクミちゃんと幸せに暮していたのです。モクミちゃんが死ぬ十年ほど前までは。
「モクちゃんは、今でも穴の中で悲しみをこらえてじっとしているのかな。それとももう死んでしまったのかな」と誰かが言いました。
それで小鳥のピーコがモクちゃんの家へ行くことになりました。
何故ってモクちゃんの家を知っているのはピーコしかいなかったのですから。
ピーコはバタバタと飛んで行ってモクちゃんの家の前まで来ると、寝ていると聞こえないので大きい声で言いましたよ。
「モクちゃん出て来て。森の中が大変よ。モクミちゃんのお墓があるこの森に、ヨソモノが住みつくよ」
するとほんの少しだけ地面がひび割れしたかと思うと、がばっと土が割れて、モクちゃんがまぶしそうに顔を出しました。
ピーコはモクちゃんの顔を見て、どんなに喜んだことでしょう。
そしてすぐピーコはモクちゃんに森の今の状態を話しました。黙って聞いていたモクちゃんは、最後に言いました。
「この歳でまた、森のために働くようになるとは思わなかったよ。でも僕が楽しく暮した森が、ヨソモノの言いなりになるなんて許せない。だから出来るか出来ないか分らないがやってみるよ。でも今すぐというわけにはいかないよ。なんといっても十年もじっとしていたのだからね。だから三日後森の広場に皆を集めてくれるかい。そこで皆と意思統一をしよう。じゃ僕はこれからその準備に入るからね」
ピーコはモクちゃんの頼もしい言葉を持って、すぐ森の皆の所へ戻って行ったのはもちろんです。