最初、二人とも、クラウドファンディングで調べたこと、活動したことを探求論文の題材にしてまとめていた。

資金集めの時系列のグラフ、写真、努力したこと、立ち向かった困難や助け舟など、こと細かにレポートにまとめてくれていた。

そのレポートがあったからこそ、ファンディング会社主催の資金追加のコンペに参加でき、最後の足りない部分をファンドの会社が、中高生特別枠という形で援助してくれた。

あれがなかったら、ファンドの成功はなかった。もともと六千万円の満額の達成がなければ、茶室は売却されることになっていたのだから、最後の一押しは二人の努力のたまものだとも言える。

けれども、斗真も錦生も探求論文には別の題材を選ぶという。ファンディングが成功した翌日の夜、二人と別々に話をした。興奮冷めやらぬ中で、それぞれにもっと先に進もうとしていた。

錦生は市の文化財保護を受けている紅葉山紬(つむぎ)を題材にしたいと言っていた。街の呉服屋の未来は明るくないと言いながらも、着物文化の発展をいついかなる時も考えている。

今日だって、お茶の世界ではお正月にあたるめでたい炉開(ろびら)きの日だからと、着物で点前をしたいと言っていた。選んだ題材が彼らしいと柊も思った。家業に繋がるならより一層力が入るだろうと応援していると伝えた。

斗真の決断も大きかった。植物と自分の関係をもっと明確にするために、園芸部と掛け持ちしたいと言った。花は自然のままが好きだという斗真にとって、両親の家業が重荷だったらしい。だが、フローリスト水瀬の跡継ぎとしての今後を真剣に考えたいと柊に教えてくれた。

クラウドファンディングの成功が彼の中の何かを変え、自分から植物との関わりを広げようとしている。

応援してくれたのは大人で、結局、自分たちは何の役にもたたなかった。だから、将来、誰かを助けられる大人になりたいと思ったのだと斗真は力強く語った。

斗真は錦生にも掛け持ちしたい話をすると言っていたものの、言い出しにくい雰囲気になった。だからといって柊から言い出すのもよくない気がして、それとなく斗真の方を見るも、視線が合わない。

 

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