夏休み初日に建てた学習計画が何の破綻もなくスムーズに進んだ経験など、ないだろう。それが人間の性なのかもしれない。
だが、そんなモラトリアムに飲まれて若い数年を棒に振るのは、私という商品にとってあまりにも勿体無い。
大学在学中であれば『現役女子大生』という売り方もできる。自分を構成するひとつ一つの要素を価値に結びつけなければならないのだ。
そして何より、美は成長曲線を描く。そして大抵、その曲線のピークは若い10代後半から20代前半に訪れる。
もちろん、その限られた時期の美だけにしか価値がないなんてことはない。未発達の美や円熟した美にも価値はあるはずだ。
だが、人間というか生物の本能的に、成熟しており、かつその中でもとりわけ若い個体に惹かれるのは至極真っ当なのだ。生殖本能がそうさせる。多くの人を惹きつける、直球の美というのは基本的にこの時期に宿るのだ。
だからこそ、タイムリミットがある価値は1秒でも早く前面に押し出さなければならない。
そう思って私はなあなあで日々を過ごさぬよう、心が冷めぬよう行動を急いで取った。
オーディションというのは存外、あちらこちらで頻繁に行われていることを知った。ネットで検索をかければ、何件ものオーディションの募集がかけられている。
だが、その内容や質は千差万別だ。ワイドショーでも取り上げられる一流芸能事務所のモデルオーディションから、日の目を浴びない地下アイドルのオーディションまで様々だ。正直言って私レベルであれば、後者のオーディションはすんなりと通るだろう。
しかし、私はできる限り、世間で名の知られている事務所が開催するオーディションばかりを選んだ。
そこにはメディアと強いコネクションを持っているからという短絡的な理由ももちろんある。だが、それ以上の理由として大手であればあるほど、フェアな関係を築いてくれるという信頼があるということだ。逆に言えば弱小であればあるほど、搾取される可能性を孕んでいるということだ。
次回更新は8月7日(金)、16時の予定です。
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