夜、俊雄さんが帰宅すると、全てを話した。

「そうだったのか……」

「うん。私も驚いたけど、ホッとしたかな。妊娠してなくて」

「……その事なんだけど……今日彼女の父親に言われたんだ。亜紀と離婚して悠希さんと一緒になるようにって。妊娠させた責任を取るのが男ってもんだってね」

「そ、そうだったんだ。でもさ、妊娠してないんだし、もう上司でもないし。何か問題があるの?」

「もし……もし、悠希さんを捨てる事があるなら、彼女は命を絶つかもしれないって言われて……」

「捨てるもなにも、付き合ってないじゃない」

「そうなんだけど……彼女を自殺に追い込むのは本意じゃない」

ああ、俊雄さんは優しい。でもそこがウイークポイントでもある。優しさに付け込まれたら、俊雄さんは自分を貫けない。

「……悠希さんを取るの?」

「……」

「ちょっと、何で無言なの!? 私を選んだんじゃないの!? 結婚して……これから幸せな生活が続く……そうじゃないの!?」

私より悠希さんを大事にするような俊雄さんに、腹が立つというより、情けないというか、呆れるというか……悲しかった。

「もういい!」

私はテーブルをバンッと叩いて、鞄を手に外へ飛び出した。

行く当てなんてないのに……

 

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家を飛び出した夜、行く当てもない私に声をかけてきた“人物”――思いもしなかったその言葉とは……?

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