「お疲れ様、みゆちゃん。来てくれて嬉しいよ。私服姿も可愛くて驚いた」
私は嬉しさを噛み締めて俯くことしかできなかった。

「ドライブ、この私の車でもいいですか?」
もちろん、頷く彼を横目に私は車を発進させた。

一時間ほど、行くあてもなく適当に車を転がしながら、私たちの会話は途切れることがなかった。過去の恋愛やセックス、風俗やアダルトビデオなど、下世話な話ばかりだったが、ショウ君の話し方は知的でユーモアに溢れていた。何よりも、溢れんばかりの性への情熱に、私は自分と似たものを感じた。

そして、彼は事あるごとに私を持ち上げた。私はどんどん、気分が良くなっていった。

信号待ち、ふとショウ君を見た。なんとも洗練された雰囲気だ。小綺麗なスーツ。清潔感があるが洒落た今風の髪型。一目見て身嗜みに気を遣っていることが分かった。目が合い少し照れ臭くなる。

「可愛いだけじゃなくて、こんなにエッチな子と出会えるなんて。本当にみゆちゃんは最高だよ。どうかな? 今からセックスしない?」

彼の問いかけに、私はすぐには応じなかった。信号が青に変わる。

セックス。ただペニスをヴァギナに入れるだけ。粘膜同士を擦り合わせるだけ。その行為に、なぜ私はこんなにも強い拘りを持っているのだろう。

わりと簡単に、周りの女は男と寝ていた。

元カレ、男友達、さらには飲みの席で知り合ったばかりの男とまで。本当に好きな相手じゃなくとも、何の見返りも求めずに後腐れなくセックスができる。そういう女達に、嫌悪感を抱かないと言えば嘘になる。しかしその嫌悪感は、自分にはできないことをさらりと成せることへの羨ましさから来ているに違いなかった。

「女にだって性欲はある。セックスしたいと思ってもいいはず」

そう自分に言い聞かせていた。それなのに、いざセックスをしないかと聞かれると、尻込みしてしまう自分がいた。