【前回の記事を読む】「志望校落ちた」——受験で失敗した娘に、母が放った第一声は「なんで落ちた!?」だった…「この先、あなたは……」

4.アダプト

詳細は書かないが警察沙汰になりかけた。

それほどまでにあの人は怒り狂い、私を責め続けた。あの夜の本山優子の顔を私はまだ覚えている。憎悪と愛情と恐怖が混ざり合った、人間の顔をした何かの顔を。

決心した。決心というより、確認だ。

本山千晴から本山優子を、極限まで遠ざける。

この決意は、山岳より高く、溟渤より深い。大げさに聞こえるかもしれないが、私は本気でそう思っている。半端じゃいけない。中途半端な距離は、また引き寄せられる。完全に遠ざける。物理的に、精神的に、可能な限り全方位で。

じゃあその先に何があるのか。

化け物だ。

S中学での経験が私に教えたことがある。

あの人が導いたO中学ではない公立のS中学に転校した際、ある意味で本山優子という足枷を外した時、私は相当なスピードで動けることが分かった。スクールカーストの上位に食い込んだ。

これが足枷ありの結果だ。

足枷を完全に外したら、どうなるか。

外見の管理。学力という通貨。返報性の利用。標的の選定とリサーチ。空気による支配。SNSの読み方。人間の承認欲求への対処法。

S中学で学んだことを全部持ち込む。持ち込むだけではない。レベルアップさせる。洗練させる。

そうしなければ、確固たる居場所というのは築けない。

本山優子はT高校という箱の価値で私を評価した。でも箱の価値と中身の価値は別だ。T高校という箱の中に入った本山千晴が、どこまで行けるかを、私は証明する。

誰かのために証明するわけじゃない。

本山優子に見せるためでも、頼りがいのない父に認めてもらうためでも、担任に評価されるためでもない。

私が、やりたいからやる。それだけ。

これだけだ。

これだけのことが、今まで1度もできなかった。

小学校から中学校まで、私の行動の全ては元をたどれば本山優子への反応だった。反発であれ従順であれ、全部あの人を基準にした行動だった。

基準を変える。

私を基準にする。

そのためにも、本山千晴から本山優子を、極限まで遠ざける。これは絶対だ。