囲碁とAlphaGo

チェスと将棋がAIに制覇されてから、次にAI開発の重要なターゲットになった完全情報ゲームは囲碁でした。囲碁はご存じの19×19マスの碁盤の上で二人の対局者が黒と白の石を交互に打って、陣取り合戦をするゲームです。

ルールは簡単ですが、プレーには非常に深い戦略性が求められます。

囲碁の対局のあり得るパターンの総数は10の170乗くらいあって、全宇宙の原子の数よりもはるかに多いと言われています。ですからDeep Blueも含めたそれまでのしらみ潰し方式のプログラムではさすがに歯が立たず、戦法においては2000年以上前の中国での発祥以来の蓄積を持つ人間の名人を超えることは非常に困難であろうと言われていました。

その予想を見事に覆したのが、ロンドンに本拠があるAIの開発企業DeepMind社(現在はGoogleの一部)が2014年ごろから開発したAlphaGo(アルファ碁)と、その累次の発展形であるAIのシリーズです。

AlphaGoは、当初は多数の名人が打ったゲームをデータとして学ばせることで一定のレベルに達しましたが、次にAlphaGoのコピー同士を何百万回も戦わせることで、さまざまな新しい戦略を生み出すことが可能になりました。

そこで導入されたアプローチは、ヒューリスティックな(発見的な:全ての可能性を潰す総探索型アプローチではなく、ランダムな試行を通して確率論的な評価を行いながら良い手を導く)手法であるモンテカルロ木探索(Monte Carlo tree search)でした。

それを可能にするのは、人間の脳の神経回路を模したニューラルネットワーク方式のプログラムによる深層学習です。AlphaGoは、2015年にヨーロッパのチャンピオンを5戦5勝で負かした後、2016年に、当時世界最強の囲碁棋士と目されていた韓国の李世 (イ・セドル)氏と対局し、4勝1敗で勝ち越しました。

その第2戦では、誰の目にも悪手で、AlphaGoの誤作動ではないかと思われた打ち手が、結果としてはAlphaGoの勝利に繋がる決め手になったことが大きな反響を呼び、AlphaGoの37手目として有名になりました。

AlphaGoはその翌年、当時世界1位の棋士にレーティングされていた中国の柯潔(かけつ)氏に3戦3勝したのちに、人類との対局からは引退しました。柯潔氏は「人間では想像もつかない手を打ち、強かった」と述べた由です。囲碁における人間とAIとの力比べはここまでで終わりました。

 

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