「あーグヤジイー」
それで如何(どう)しただと?
チャックを上げた時に、暑さで伸び切っていた、キンタマの袋がチャックに挟まったのだ。どうだ分かったか、この野郎!
とにかく痛さの原因は分かった。分かったからと言って、そのまま放ってはおけぬ、玉袋をチャックから外さねばならぬ。それにはもう一度、あの挟まった袋の上をチャックの金具を通さなければならぬ。思うだけでも恐ろしい。
チャックを少し下ろしてみたが痛い。
チャックを壊すか? ……不可能だ、Y●Kのバカ!
早くしないと患部が腫(は)れて取れなくなる。
上がったものは下がるだろう。決断した。
下を見ないように、鋭く天を睨(にら)み上げた。
「南無さん、タマタマの皮よ外れてくれ。……一、二の~エイヤー」
「ギヤーッ」
大声を出す方が、いくらか痛さが分散する。
そーっと下を見る……外れているが……タマがない……エーッ玉がない。
あれほどデレーと伸びていたのに、手で探ると、四分の一ほどに縮み上がって上の方に隠れている。
タマタマには自己防御本能がある。暑いからといって、油断して伸びていると、またチャックに挟まれるかもしれない、だから怖がって自分から縮み上がっているのだ。可愛い奴メ。
どうだ、こんなこと知ってるか?
……あーあ、それにしても痛かったナー。
チャックに金玉の皮挟むなんて! どうかしているよ、全く。