始まりの神話
これはルキフェルの反乱までを語る神話である。
神はその能力で聞き取った未来に、どこかで誰かが発言した「どんなものでも証明されるまでは妄想に過ぎない」という言葉に引っ掛かり、自身の全知全能を一つ一つ証明しようと考えました。その証明する力の一つが世界創造でした。
神はその全知全能から創造した世界の未来も自分自身が将来に感じる感情も、わかっていました。
神にとって全知全能を証明することが目的であり、完璧に創造する必要はなかったので、適当に世界を創造しました。
世界は予想通りに成長を続けましたが、自身に沸き立つ感情は予想より大きいものになっていきました。世界に対して愛着が湧いたのです。神は他の創造物よりも熱心に世界を観察するようになりました。
しかしやがてそれは、自身が知的好奇心を満たすことを重視した一方で、完璧性を求めなかったため、「現実の世界」と「完璧に創造した世界」との落差に罪を感じていきました。
神はその反省から完璧な存在の創造を次の目標にしました。
神が考える完璧な存在とは自身でした。そこで、自身の創造を考えました。しかし、全知全能の証明が終わっていない状態では自身の完全な把握ができないため完全なコピーは不可能であることに気付きました。
証明の完了はまだ検証を開始していない事柄があるとはいえ、時間を掛ければ解決する問題でした。ただし、神の価値観に則っても果てしない時間が必要です。
証明が完了するのを待つか。
神は考えましたが、多くの人と同じく罪悪感の解決を時間に委ねることを拒否しました。
そこで、証明が既に完了している力のコピーを行いつつ、足りない部分には世界が持つ成長性を与えることにしました。
創造の方針が決定すると、その力を使って一瞬で創造を終えました。
これを「ルキフェル」と名付けました。ルキフェルは神には劣るけれども全知全能であることに加え、与えられた成長性から限られた力と努力によって、如何にすれば最善を成せるかを考える存在となりました。
それは、神がその娘を創造した目的が完璧の追求であったことを思えば、正に完璧な存在、「私の光」でした。また、その優秀さは高く評価していました。
例えば、神さえも見落としていた点を、彼女は指摘したことがありました。
「一点、確認させてください。この研究は『時間の概念を持つ空間』である『世界』を経過観察し、得られた観察結果を貴方が未来の事象を書き起こしたデータと差異がないか照合するものですが、この未来のデータは予測と予知のどちらによって得たものでしょうか?」
この指摘は神に重大な気付きを与えました。
それは未来を知る方法は一つではなく、それらから得られる結果が一致するとは限らないことです。
思考によって導かれたデータが外れ、能力によって得られたデータだけが正しい。そのような可能性が考えられたのです。
さらにそれは、全ての始まりである「どんなものでも証明されるまでは妄想に過ぎない」という言葉は何から得たものかという疑問すら抱かせました。