【前回の記事を読む】【演技論】俳優が理解しておかないといけない“大前提”とは。与えられた世界で、キャラクターとして生きるためには…
はじめに
私は2010年にアクティングコーチのキャリアをニューヨークでスタートし、2012年6月に東京に演技スクールtori studioを設立しました。当時、まだ日本では、アクティングコーチという職業は認知されていませんでした。
私は「日本の業界の発展のためにはアクティングコーチの活躍が必要不可欠だ。ならば、自分が第一人者として、日本におけるアクティングコーチという職業の可能性を切り開こう」と決意し、
これまでに、初心者の方々から第一線で活躍されている方々まで、そして、日本だけでなくアメリカや韓国といった海外でもコーチングする機会に恵まれて、約1500名の方々と演技に向き合って参りました。
また、多くの方々のご理解を賜り、映画やTVドラマやNetflixといった様々な媒体の作品において、作品に携わった者の一人、という証しとして、アクティングコーチという肩書がクレジットされるという念願も叶いました。
現在では、日本アクティングコーチ連盟(R)を設立し、アクティングコーチの育成と輩出にも力を入れており、微力ながら、少しでも業界の発展に貢献できるように尽力しています。
私のアクティングコーチとしての活動の中で生まれたのがトリスタジオアプローチです。トリスタジオアプローチの特徴は「俳優の想像力を使うことを前提としている」という点です。
私の恩師の一人であるハリウッドの演技指導者イヴァナ・チャバックは、俳優自身のトラウマを用いて演技を構築するテクニックを開発しており、世界各国の俳優が活用しています。非常にパワフルで実用的なアプローチです。
ただ、私の個人的な好みで、私は「無限に広げることができるイマジネーションを働かせて、登場人物としてストーリーを生きる」というほうが楽しいと感じるタイプなので、先述した通り、俳優の想像力を使ってキャラクターにアプローチする方法を構築しました。
私にとって本書が初めての執筆経験となりますが、可能な限り、シンプルに、一つ一つ順を追って、分かりやすく、解説したつもりです。本書を通して、一人でも多くの方々が、楽しい時間を過ごして頂けましたら嬉しいです。
キャラクターアプローチで一番大切なこと。
それは、キャラクターに対して愛情と尊敬を持つことです。その気持ちがあれば、キャラクターのことをもっと知ってあげたくなります。
キャラクターを人物として見ることができます。キャラクターに近づきたいという欲求が生まれます。
世界で最も素晴らしい女優の一人であるメリル・ストリープはこんな風な言葉を残しています。
「私は私自身に対する尊敬より、キャラクターに対する尊敬が劣ることは無い」
この姿勢が、彼女の素晴らしい演技を生んでいるのでしょう。
客観的に台本を分析し、客観的にキャラクターを理解し、キャラクターの魂を掴み、その魂を自分の魂としましょう。それは容易なことではありませんが可能なことです。
その為には、沢山のことをやらなければいけません。怠け者ではいけません。キャラクターに自分自身の全てを捧げる覚悟を決めましょう。与えれば与えただけ、それは結果として必ず現れます。
キャラクターにどれだけ与えられたかで、どれだけ素晴らしい演技になるか、どれだけ素晴らしい作品になるか、どれだけ世の中に貢献できるかが決まります。