「突然すみません。偶然居合わせて聞こえてしまったのですが、お父様の戦記の翻刻でお困りであれば、私にお手伝いさせて頂けませんか? 翻刻は趣味なので、お代は結構です。」
そう声を掛けてくださったのが、柴田さんという権禰宜(神社の神職)の方でした。
日を改めて母と私も同席してお話をさせて頂き、信頼できる方だと分かったので、全ての原稿をお預けして翻刻をお願いすることになりました
それからわずか2カ月余り、柴田さんは驚異的なスピードで全ての原稿を翻刻してくださいました。
足掛け何年も悪戦苦闘していた我々からすると、それは信じ難い早さでした。
とはいうものの、祖父の字には判別困難な部分が多々あり、柴田さんは判読できない部分に余計な推測をせずに「■」としてくださっていました。その「■」だらけの原稿を、父と母が原稿用紙と見比べながらひとつずつ解読し、半年ほどをかけてほぼ読める状態に仕上げていきました。
こうして完成した「中支戦記」の翻刻は、祖父の福島姓一が赤紙を(2度も)受けて戦地に赴き、奇跡的な生還を遂げた後に書き遺した手記を、これまた奇跡的に出会った権禰宜(当時)の柴田さんの翻刻を経て、父の福島俊輔と母の公子が夫婦の共同作業で完成させるという、様々な幸運と情熱と尽力が重なって完成に至ったものでした。
父は完成後まもなく認知症となり、数年の施設暮らしを経て亡くなったため、夫婦としての最後の共同作業のような形になりました。
今にして思えば、市ヶ谷の自衛隊に行くところから完成までを、祖父の魂が導いてくれたように感じます。
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