第一講 水先案内人がやってきた
ここは株式会社西日本スタディサポートと業務提携している株式会社公務出版の東京スタジオである。
小会議室にカメラや照明、モニターなどを設置して、スタジオとして使っている。講師浜田が人文科学・世界史の収録の講義をしている。
「四番 ドイツはアフリカ横断政策を取ったが、カイロからケープタウンへアフリカ縦断政策を取ったイギリスと衝突し、ファショダ事件が起こった。
これは冒頭のドイツが完全に間違いであり、高校時代に世界史を勉強した方ならば、ドイツではなくてフランスが入るということがわかるでしょう。
しかし、この四番で確定できなかったとしても、「わからない」という判断をしっかりさせるために、 △を付けて次の選択肢を見に行くのがよい手段です。△をうまく使いましょう。
〇か×かを無理に決めなくてもいいのです。「わからない」というのも立派な判断です。聞いたことがある、見たことがある。
いいかげんな根拠で〇か×かに決め付けようとすると、その選択肢の判断を間違えてしまい誤答が確定します。そこで、わからないということを正直に申告して、△を付けるのです。
仮に五本中四本の選択肢がすごく難しくて△と判断したとしましょう。しかし、このあとの五番が、ドイツがフランスと衝突してモロッコ事件が起こったという、過去問頻出の内容なので、この問題はクリアできるのです。
選択肢四本が訳のわからない内容で△を四つ付けたとしても、残り一本を正確に〇と判断したら、正解を一本釣りできるのです」
ここまで話を進めてカメラに映らないように画面から離れて、講師浜田は手元の二リットルのペットボトルに直に口を付けて、水をごくっと飲み干した。
手元のタイマーを確認した。四十九分十秒、そろそろこのコマの講義をまとめてもいい頃合いだ。
「いいですか。試験は知識の量で決まるのではありません。知識の質で決まるのです。知識は量ではなくて、質です。自分の頭の中の知識の精度が低ければ、△としか判断できません。
試験の頻出事項に絞って、少ない知識でいいので百%の確率で〇や ×と判断できるよう、知識の精度を高めましょう。
受験界でよく言われる言葉ですが、百のあいまいな知識より十の確実な知識です。それでは、人文科学第七回、世界史近代の講義をこれにて終了いたします。お疲れ様でした」
カメラの前で、講師浜田は頭を下げた。程なく、スタッフが入ってきた。