Chapter3 定住への道
早速沼田・早坂とともに塀の設計に取り掛かった。図面と工期は、今ある道具と人数から判断し、計算できる限りにおいて正確に制作したが、それでも実現率は四〇%といったところだった。岩崎は暗い顔をしたが、早坂が「今の状況で四割なら上等だろう」と不安を強引になぎ払った。
さらに、木を伐り出す方法、運ぶ方法、穴を掘る方法、木を立てる方法など、工事そのもののやり方を考えた。これには林や盛江、泉など、他の大学生も意見を述べた。「こんなものだろう」と言えるレベルまで計画がまとまったのは、塀を作ろうと言い出してから四日後だった。
その日林は全員に召集をかけた。全ての大学生・中学生が観光案内所前に集った。
「ええと、この間から噂が出ているから知っていると思うけど」
林は話を切り出そうとした。
すると、
「塀の話よね!」木崎が叫んだ。「私、大賛成です!だって、またイノシシが襲ってきたら危ないし、せっかく実った畑の作物を食い荒らされるのも困る。早く造ろうよ!」
誰かが続く。
「獣は夜行性が多いって言うわ。それを思うと夜もおちおち眠れなくて――」
中学生女子たちは眉をひそめ、口々に「そうそう」と言った。
林はみなを抑え、
「塀を作るにあたり、我らが建設大臣・岩崎君を中心にした大学生チームが、すでに設計図を完成させています。作業計画・人員割り当てなんかもね。細かいことは後で説明するとして、まずどんなものを造るのか――決まったのは、高さ五メートルの塀でこのキャンプ場のまわりを囲むってことです」
「五メートル? まわりを囲む?」
すっとんきょうな声を上げたのは川田だった。彼の顔は紅潮していた。
「それって俺たちの力でできるんですか? だいたい、いつまでに造るつもりです?」
「一応三か月。冬が来るまでには」