こうして、病院以外、どこにも外出することのなかった私がハンチング帽を目深に被り、妻の運転する黄色の自家用車で向かった先は、五〇キロほど離れたペットショップ。月曜日の割にはラッシュもなく、スムーズに到着することができた。

久しぶりの外出ということもあり、私は恐る恐る妻の後ろに続き、店内に足を運んだ。そして、左隅一番奥のペットルームに向かった。

「へぇ、こった(こんな)ふうになってるんだ」

「お父さん、初めてだからビックリしたでしょう」

下調べ済みの妻と違い、私は初めての光景に目を丸くした。六畳程のスペースに、上下の個室が二〇室。仔猫や仔犬が一匹ずつ入っている。その右端の上の段に、お目当ての彼は眠っていた。

「いたいた。ねぇ、本物の方がずっと可愛いでしょ」

妻のいうとおり、予めショップのホームページで観た仔犬よりチャーミングだった。

ネームプーレートにビーグル、牡、誕生日、平成三〇年五月六日頃と明記されている。

なるほど、人間と違い、出生日は〝頃〟と曖昧なのか。変なことに感心しながら隣の仔犬に目が移った。

ジャック・ラッセル・テリア。舌を噛みそうな名前だが、ビーグルとよく似ている。

その隣、『相談中』の札が掛かっているゴールデン・リトリバー。こんなに可愛い仔犬が街で見かける大きな盲導犬になるのか。

私は次々と目移りしながら、いつのまにか久しぶりの外出を楽しんでいた。

次回更新は5月20日(水)、7時の予定です。

 

👉『マーカスがおしえてくれた』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】触り方が変わってからは、指1本で支配された。何度も奉仕され、「もういい」と言っても、彼は止まらなくて…

【注目記事】心はすれ違っているのに、夫婦の営みを求める夫…夜は断ってはいけない気がして耐えた。苦痛で、一番辛かった。