「謝罪が先なんじゃないのかね。壊す、壊さないなんてのはそのあとだ」

確かにそうだ。子供らの不安そうな顔。ここは、大人の対応ってやつを見せなきゃいけない。わたしは、袖すり合うだけの赤の他人なら、割と平然と物言いができるのだ。

「ごめんなさい。壊したものがあれば、弁償します」

「あんたの謝罪には順序ってものがないのかね。弁償なんてものは、壊す、壊さないの、そのまたあとの話だ」

よほど大切なものを傷つけたのか、彼は妙にねちっこく絡んでくる。許す気がないのなら、いくら払えばいいのか、さっさと金額を言えばいいのに。

「すいません。どう言えば許してもらえるのかしら」

「近頃の若いもんは謝り方も知らんのか。何を教わってきたのやら。こんなゴムまりで壊れるものなんてありゃせん。けど返すのが面倒だ。もう打たんでくれ、頼んだよ」

彼はそう言いボールを放ると、踵を返してさっさと塀に向かって歩いていった。

気が抜けたと同時に胸をなでおろした。これといった被害はなかったが、一言文句を言わないと気が済まない、ただそれだけのことらしい。子供らの表情も、ほっとしたものに変わっていく。

「ガラスを割ったかと思ったじゃんか」

「あのじいちゃん、わけわかんねーよな」

ポツリポツリと不満げに口を開くのは、主に男の子たちだ。

「危なかったね、おねえさん」

満塁ホームランの効能か、呼び名が格上げされた。ジャイアンツの少年だ。こちらから要求しておきながら、そう呼ばれるのはなんとなく気恥ずかしい。

「うん。でも、窓とか盆栽とか、壊さないで本当に良かった」