優人は次の休みに鎌倉でも行こうとラインで提案しておいた。シフト勤務の利点は混んでる人気観光地に平日行けることだ。よし、これで安心だ。
モール内の社員食堂でランチ中、永村が言った。
「なあ、こないだのサックスまた聴きたいんだ、行かないか? 金曜だけなのかな、あの河井さんて」
「ああ……。確か金曜だけだったような。入れ替え制だから。今度の金曜は俺遅番だからちょっとな……」
「そうか、俺行ってこようかな」
「そんなに気に入ったのか」
「うん、カッコ良かったし、サックスの音っていいな」
「なあに、サックスって?」
みどりが食事のトレーを手に後ろから声をかけてきた。永村が振り返って答えた。
「おう久居、異動だってな」
みどりは優人の隣に座った。
「うん、本牧の方が家から近いから良かったわ」
「何だよ、建前でも残念がれよ」
「残念がってるわよー。それでサックスって? どこかライブでも行ったの」
みどりは食事する腕をこつりと優人の肘に寄せてきた。シャツを通し、うっすらと肌のぬくもりが伝わってくる。優人はちょっと面食らった。こんなこと、いつも平静なみどりらしくないな……。
「いや、田野の彼女の勤め先のレストランだよ。生演奏やってるんだ。前も連れてってもらったんだけど、その時はピアノだったな。こないだ行ったらサックスの演奏やってて、それがすごい良かったんだ」
「そうなの、私も行きたいな」
「ええ?」
優人は思わず声を上げた。