初めての恋
初めて恋をしたのは、ちょうどこの頃だった。先輩にこの子と付き合ってみればと勧められて始まった交際だったが、私は真剣だった。
仕事が休みの日には、二人で新宿や池袋の街に出かけた。デートといっても手をつないで歩くくらいだったが、私は彼女と結婚したいと考えていた。山梨の実家にも一緒に行った。東京を出発する前に彼女の家に電話をして彼女のお父さんとも話をした。お父さんはよろしくお願いしますと言ってくれた。親も公認なんだと思うとうれしかった。
実家に泊って家族にも彼女を紹介した。母が心配したのか、私達と弟三人分の布団を並べて敷いたのを覚えている。
翌日は一緒に山に登り、精進ヶ滝にも連れて行った。この日も、母が弟を私たちのお目付役に付け、三人で出掛けた。精進ヶ滝は深い森の中にある東日本最大級の滝だ。私が生まれ育った山梨の大自然を彼女も楽しんでいるようで、連れてきてよかったと思った。
その後彼女とは結婚の約束をした。二人で暮らす日を私はとても楽しみにしていた。
しかしある日、話があるからと彼女に呼び出された。
そして突然別れを告げられた。私は驚いて理由を尋ねた。
あなたは消極的だから私とは合わないと彼女は言う。私は納得できなかったが、彼女の気持ちが決まっているのならもうどうしようもない。
しばらくはなかなかショックから立ち直れなかった。一緒になろうと誓ったのにと、彼女を恨んだ日もある。しかし段々と気持ちを切り替えていった。
これまで以上に仕事に打ち込んで、見返してやろう。
自分に力をつけて、もう二度と消極的などと言われない男になろう。
それからは、ますます真っ黒になって働いた。そんな様子を見ていた上司が、私に大きなチャンスをくれることになる。
失恋が自分を大きく成長させるバネになったのだ。
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