「どうしました?」
男性の声だ。
「のどが渇いたので、飲み物をください」
「はい、少しお待ちください」
そして現れたのは、入院したとき部屋に案内してくれたのとは違う男性看護師だった。この病院は、男性患者には男性の看護師がつく決まりがあるらしかった。
経口補水液を手渡された。飲んでみたけど冷たくない。そう言うと、
「熱のあるときは、あまり温度差のない常温の飲み物にしたほうが、内臓に優しいですよ」と、彼は言った。
そんなもんかなと、納得した。
なぜこうなってしまったのだろう。この際だからよく、今までのことを考えてみようと思った。未成年のうちから、両親がいなくなり、私は路頭に迷ってしまった。
両親の離婚は、私の責任ではないが、今まであまりにも場当たり的に生きてきたから、こうなってしまったのだろう。
私が十六歳の夏、母が脳梗塞で突然死んだ。心の準備もなにもできていないままで、お金もなかったので、葬式も出せなかった。
次回更新は5月2日(土)、14時の予定です。
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