「千江美ちゃん。次にいつ行く?」
「えっ?」
「ジム。新山さんのボクシング見学。早いほうがいいと思うよ」
机に頬杖を突きながら、次の授業の宿題を考えている私にサワが問いかける。
「何、何で?」
「初めて見たけど、プロボクサーって格好いいよね。それに、迫力があって感動しちゃった。もし他にも女の子が来てたら、新山さんを一回見ただけで虜になっちゃうよ。ライバルが増える前に千江美の存在をアピールしなきゃ」
「確かに。そうなったら困る。そうなる前に行ったほうがいいよね。私は、新山さんしか目に入らないから。ボクサーを知って周りの男子があまりにも子供でさぁ」
「そうだね。クラスの男子じゃ比べる対象が違い過ぎるね。あれから、ファンレター出すって言ってたでしょう」
サワは私の顔を覗き込む。
「出した?」
「うん。出したよ」
「それで、返事は?」
「来ないよ〜。返事なんて最初からくると思ってない」
私は淋しそうに苦笑した。サワは、
「そうかな? 意外と距離が近い気がするけど……。最初から諦めないで頑張ろうよ」
頼もしい。私は、ジムに見学に行っても話しかけるどころか、まともに見ることもできない。
私にとって新山選手は、雲の上の存在でスーパースターだった。
「私たちが見学に行った後、すぐに新山さん、試合があったよね。勝ったの?」
「もちろんだよ。三対〇の文句なしの判定勝ちだよ」
次の見学は防衛戦からしばらく経ったから、新山選手の時間に余裕があるうちに行こう。
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