【前回の記事を読む】「彼に会ってみたい」その衝動を抑えられなかった…授業をサボり、2時間かけてたどり着いた場所は……

第一章

新山好次(こうじ)選手

〝新山さんだって減量をしているだろう。どのくらい体重を落とすのかなぁ?〟

そんなことを考えながらリングの右に目を向ける。そこで私は、パンチングボールを叩いている一人の選手にくぎ付けになった。

〝新山さんだ!! 日本バンタム級チャンピオン新山好次選手だ!!〟

素早く首を振るボールを相手に、軽くステップを踏み黙々とパンチングボールを叩いていた。

白いTシャツに、トレーニングパンツ。足はもちろん、ボクシングシューズ。手にはパンチの衝撃から拳を守るバンテージが巻かれていた。髪を短くカットし、彫が深く引き締まった顔立ち。いかにもスポーツマンらしい。そこがまた、私を虜にしていた。心臓がバクバクして口から飛び出しそうになる。

ジムには、必ず三分計の時計がある。三分で「チーン」と鳴りまた一分で「チーン」と鳴る。これは、ボクサーに三分と一分の時間を体に刻み込むためのもの。三分と一分はボクサーにとって不可欠な時間のリズムだ。すべての試合に繋がっていく。

「チーン」

と、時計が鳴る。一分のインターバルに入る。練習生たちは、お互いに会話を始めた。しかし、新山選手は誰と会話するわけでもなく、鋭く険しい眼差しで一点をジッと見つめていた。彼はこの十日後に日本タイトル防衛戦、千葉隆俊との二度目の対戦を控えていた。

パンチングボールの後、リングに上がりシャドーボクシングを始めた。ジャブ、ストレート、フック、アッパーと次から次へとパンチを出していく。

〝これがプロボクサー!? 凄い!! あり得ない!〟