しかし、後でまた書くが、フランス語検定の口頭試問の形式に一年以上悩まされ、「第一に、第二に」と始める癖がついてしまったから、ついそう書き始めたが、それ以上の意味はない。実際、いざ書き始めてみると何か乗ってこない。二か月くらい書いてみたが、気力が続かない。しかし、一か月くらいするとまた書きたくなる。
そんなことを三回繰り返し、何かの賞に応募するために書いてみようと思いつき、このコンテストを発見。それで、もう一度新たに書き始めたのだが、やはり乗って来ない。しかし、冒頭の「出だし」を書き直しているうちに、何故続かないか、漸く、69歳にして分かったらしい。
つまり、私が中学生の頃、人生に対するある程度のイメージがあり、漠然と、そうなると思っていたことが、完全に間違いであり、事実、人生は全然、別な方向へ展開して行った。
それなのに、いざ、自分の人生を振り返ろうとすると、大学を除籍になってから、35年以上、色々な事があった筈なのだが、それらを、既にステレオタイプの物語にして、考えていたのだった。
これまでも、文章を書くこと自体が、そうしたステレオタイプをそのまま写すことだという抜きがたく誤ったイメージを持っていて、そうやって書いていたから、いつも次第に書くのが嫌になっていたのだろう。
何故なら、既にわかっていることを繰り返すことに何の意味がある。
ベルクソンが言うように、「自然は無駄を嫌う」。いつも人生は漠然として、予測がつかないのである。なぜ、62歳から、またフランス語を始めねばならなかったのか。好きだったから、と簡単に言って済ませたが、総括的にはそう言うしかないから、そう言ったに過ぎない。そう繰り返そう。
「だから、人はより明瞭に、それらを知ろうとするなら、個別的な事柄を一つ一つ物語るしかないのである。」
さて、今度こそ、始めようか。
次回更新は5月4日(月)、11時の予定です。
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