翌朝、出勤した従業員から「ヒロさんが首を吊っている」と電話が入る。
その従業員に生きているかどうか聞くが、分からないと言う。勝也は直ぐに工場へ向かった。
頭の中が真っ白で、途中の信号では、青信号なのに止まっていたり、赤信号なのに行ってしまったりと何が何だか分からない状態だった。
工場に着くと、そこにはビールの空き缶とタバコの空箱が残されていた。1・2mの脚立を立て、上からビニールのトラロープで首を吊ったようだった。
勝也が着いた時にはヒロはその場に横たわっていた。第一発見者の従業員から状況を聞くと、脚立は立ったままで、足は地面から30センチほど浮いた状態、脚立の天場辺りにはお尻がかかっていたという。
本当に死ぬ気はなかったのだろう。ビニール製のロープで、小さな輪にロープを通し、引っ張ればグイグイと締め付けられる作りになっていた。
勝也は最後の電話の際にかなり叱ったので、何とも言えない複雑な心境だった。
その後、ヒロの彼女も駆けつけ、色々と話をした。彼女の父が亡くなってから死が身近に感じたのか、鬱のせいなのか、生きていても何も楽しい事がないなどと、自殺を仄めかすような事も言っていたそうだ。
彼の父親は小さい頃に家を出ていったと聞いている。彼の母親も健康保険の支払いのお金を渡しても支払いをせずに使い込んでしまうような母親だった。
勝也はそんな事がある度にお金を貸していた。