ディスコの開店待ちをするこの場に於(お)いて、今日が新来(しんらい)である正春達は顔見知りがいない謂(い)わばアウェイの状況だ。しかし、正春はこんな場面でも一人特別な異彩を放っていて自然と衆目(しゅうもく)を集めてしまう。
オープンを待ち侘(わ)びる店の常連客なのか、スカジャンを着た金髪でノリの良い男が、エレベーター内で未(いま)だ点灯しない6Fボタンを繰り返し押している。そして反応しないので「まだかよ」等と落ち込んだ顔をしながら行先なく閉まろうとするドアに態(わざ)と挟(はさ)まるパフォーマンスを披露(ひろう)すると、その度に不良仲間の笑いと歓声が上がっていた。
エレベーター前に溜(た)まっている何組かの中で、海外のプロラグビー選手と見紛(まが)う体重百キロ超えの男がいる。この大柄な男はここに集まっている若者より大分(だいぶ)年長に見えた。
この男は初見の正春に興味を持ったと許(ばか)り、さっきから何故(なぜ)か拗執(しつよう)にガンを飛ばしてくるのだ。相対(あいたい)する距離は5mといった処か、正春もその視線に気付いてはいたが、ここは敢(あ)えて応じず無視を決め込むとした。
その理由は一々(いちいち)面倒だの一言に尽(つ)きる。
正春は内心〝挨拶しろとでもいうのかこの野郎〟と思っていたが、一緒にいる仲間の顔を笑って見ながら、この男と一度も眼を合わすこと無くその場を遣(や)り過ごすのだった。
そんな折、2基あるエレベーター双方の6階にランプが点(つ)いた。すると速(すみ)やかに階下へ降りてくる。1階に到着して2つの扉が同時に開くと、タキシードを着た店員と思(おぼ)しき2 人の男が和(にこ)やかな笑顔で現れ
「長らくお待たせしました。さあフィナーレのオープンです。いらっしゃいませようこそ!」
こう話すと小慣れた感じで会釈する。
――皆んな一斉にエレベーターへ傾(なだ)れ込む中で、正春はさっきのラグビー野郎とは敢えて別の方に乗った。