はじめに

タイトルからして「むむっ?」と思われた読者も少なくないはずです。そのため、まずは自己紹介からさせていただければと思います。

私は在日朝鮮人3世として自然豊かな和歌山県で生まれました。

日本において、朝鮮民族の子どもたちを対象に自国の言葉や歴史・文化を教える朝鮮学校で長らく教職員をしていた父と母のもとで育った私は、幼稚園から高校までの16年間を朝鮮学校で学びました。

大阪朝鮮高級学校を卒業後は、両親の影響もあり、小学校の教員になりたいという願望から、東京都小平市にある朝鮮大学校へと進学しました。(中高時代を大阪で過ごしたため、後に本文内で関西弁が威力を発揮しますがご了承ください)

大学では教育学部に所属しながら理科教育を専攻して勉強しましたが、東京都にありながらカブトムシやクワガタムシがよく採れる玉川上水沿いに大学があったため、昆虫採集に夢中になりました。

そんな日々を過ごしていると、もっと深く昆虫を知りたいと思うようになり、知り合いの方から愛媛大学にある環境昆虫学研究室の存在を教えていただきました。

ナフタリン(防虫剤)の香る標本室と研究室を見学してからは、日本屈指の虫好きが集まることで有名なこの研究室で学びたいという気持ちが強くなり、受験を無事に終え、憧れの愛媛大学大学院へと進学しました。

四国四県で唯一の朝鮮学校である四国朝鮮初中級学校の寄宿舎に居候しながら過ごした5年間の大学院生活は、人生において大変貴重でかけがえのない日々の連続でした。

振り返ってみると苦悩も多い期間でしたが、無事に学位を取得し、東日本大震災のあった2011年に、母校である朝鮮大学校の教員として小平市に帰ってきました。

今では、主に理科教育や生物に関する講義やゼミを受け持ちながら機会を作って訪朝し、朝鮮半島の昆虫相、特に北部である朝鮮民主主義人民共和国の昆虫相を明らかにするため、現地の研究者とともに調査・研究を行っています。(2025年までの訪朝歴は14回です)

そんな私の国籍は「朝鮮」で、祖国は朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮もしくは祖国とも記述)です。

このように紹介をすると、日本ではほとんどの人が目を丸くして、「え? あの〈北朝鮮〉のことですか?」と耳を疑います。

無理もありません。日本の人にとって大韓民国は大変身近な存在でも、今日における報道を見るかぎりでは「北朝鮮」という国の印象はあまりにも「良くないもの」として認知されているからです。

確かに、両国は未だに国交のない状況にあり、政治問題において最も複雑で難しい関係にあります。

しかし、そのような関係にある朝鮮においても、そこに住む人々は、私たちと同じように懸命に仕事をして、家族を想い、友だちと喜怒哀楽を分かち合いながら、自然と関わり日々の生活を送っています。