【前回記事を読む】新規事業に挑むほど動けなくなる? 終わらないリスク議論が事業を殺す。大企業が陥る「悪魔の証明」サイクル
1章 大企業が繰り返す茶番劇の正体
事業創造は大企業の泣きどころ
大企業とスタートアップのアライアンス(企業間提携)が上手く進みにくいことはずいぶん前から言われています。ただ、これは予想外のことではありません。
それぞれが持つ暗黙知、形式知、実践知のすべてが異なる、別世界の人間同士のコラボレーションが上手く進むとは考え難いかもしれません。大げさではなく、共通しているのは同じ言語を話すことくらいです。
大企業は自らの既存事業における運営ルールそのままに、スタートアップを質問攻めし、自分たちの考えに合う合理性のある回答、そして大量のエビデンスの提示を求めます。
これは成熟し守りのフェーズに入った企業にとっての常とう手段ですが、この手法は攻めのフェーズにいるスタートアップを辟易させます。
大企業はゼロからの事業創造に適してないばかりか、それを得意とするスタートアップとのコラボも苦手なのです。すべての領域で洗練されている人はいません。
専門性を追求すればするほどに、得手不得手の濃淡が濃くなっていくのが必然でしょう。
ある競技のトップアスリートも別の競技では素人であるように、ある舞台で輝くパフォーマーが別の舞台では必要とされないように、大企業はスタートアップの領域では輝けないのです。
つまり、ゼロからの事業創造の土俵にいる限り、スタートアップが巨大な象であり、大企業は小さな蟻となります。だからこそ、大企業は、広く言えば事業創造という同じ土俵でありながら、実際は大企業だけが目指し得る領域を目指し、そこで堂々と陣取るべきだと考えます。
そしてそこは、大企業にとって居心地が良いだけでなく、事業的にも魅力的な場所であるはずです。そこにたどり着くには、大企業に合った参考書が必要になります。
本書がその役割を担えることを願ってやみません。