そんな中、私たちを含めいくつかのグループはまだ座って談笑を続けていた。ふと顔を上げると、池のある中庭が見える窓側の一角に、今朝見かけた軽音部の四人が座っているのが見える。
(あの人たち、確か軽音部の先輩たちだ……)
心の中で呟き視線を戻す。先輩たちの近くを通りかかった数名の女子生徒が声を掛けると、彼らは手を挙げて挨拶を返す。女子生徒たちは嬉しそうに声を上げ、興奮した様子で私の横を足早に通り過ぎていく。
「何事かと思ったらまたあの軽音部ね。昼休みもゆっくりできないなんて、人気者になんてなるもんじゃないわね」
その様子を見ていた莉央が、井戸端会議で噂話をする主婦さながら言った。そして海斗と光輝に体を向けると、私に聞こえるように囁く。
「軽音部の先輩たち、今日も朝から大人気でしたよ。依夢は興味ないらしいけどねー」
「マジで? あの人たち最近ますます女子に人気あるよな。男の俺らから見てもかっこいいし、男のファンが多いのも納得できる。なあ? 海斗」
「そりゃそうだろ。あの人たちはプロを目指して、本格的に活動してるらしいからな。特にギターの律音(りつと)先輩は音楽一家のエリートで、既に音楽事務所に所属してるって噂だぜ」
「なるほどね、どうりでレベルが違うわけだ」
莉央が納得した表情で相槌を打つ。
「都内のライブハウスのイベントにも、よく参加してるらしいぜ」
「そうなんだ。それにしても海斗、情報通だね。私、そんなこと全然知らなかった。いつか私も先輩たちの演奏、聴いてみたいな」
黙って話を聞いていたが、みんなの話を聞いているうちに少し興味が湧いてきた。
「あれ? さっきイケメンは苦手だって言ってなかったっけ?」
嫌味っぽく言うと莉央は肩をすくめる。
「イケメンは苦手だけど音楽は好きだから聴いてみたいの。生で演奏聴く機会なんてなかなかないし」
再び軽音部の四人に視線を向けると、ふとそのうちのひとりと目が合い、私は慌てて目線を逸らす。
「お、もうこんな時間だ。そろそろ教室戻ろうぜ」
腕時計で時間を確認した海斗の声で、我に返り「そうだね」と慌てて鞄を肩に掛けながら立ち上がった。
「あー、びっくりした……」
私が小さな声で呟くと莉央が振り返る。
「ん? なんか言った?」
「ううん。何にも言ってないよ。行こ」
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